データの読み方

薬学部|ストレート合格率が低い大学、10年後は?

薬学部受験情報館

薬剤師を目指す薬学部の課程は、6年制です。では、6年で国家試験に合格できなかった人は、その後、どうなっているのでしょうか。

今のストレート合格率が低いほうの、私立の10校で、2013〜2015年度に入学した人たちを見ると、6年の時点で合格していたのは、10校の平均で34.73%でした。それが、入学から10年目の国家試験まででは、平均54.45%です。時間をかけて合格した人がいる一方で、10年たっても合格していない人も、います。

この記事では、薬学部を目指す受験生と保護者のかたに向けて、入学から10年目までの合格の実態を、文部科学省の公表データで、私立大学ごとに見ていきます。動画では出していない、私立55校の全順位も載せています。

この記事の要点

  • 入学から10年目の国家試験までに合格した人の割合(10年での合格率)は、2013〜2015年度に入学した人で、私立55校の単純平均75.09%でした
  • いちばん高いのは星薬科大学の95.20%、いちばん低いのは千葉科学大学の34.00%です
  • 今のストレート合格率が高い大学ほど、少し前に入学した人たちの10年での合格率も高い傾向があります(私立55校・相関係数0.858)
  • 同じ学年で見ると、どの大学も、6年の時点より10年の時点のほうが高くなっています。ただし、私立で10年での合格率が100%の大学はありません
  • 入学から10年たった時点で、入学した人は「合格した人」「卒業したけれど合格していない人」「退学などで籍を離れた人」「まだ在籍している人」の4つに分かれます

目次

  1. 10年での合格率とは|入学から10年目の国家試験までに合格した人の割合
  2. 分母と対象|入学した人が分母・私立55校
  3. 今のストレート合格率が高い大学・低い大学の、10年での合格率(別の学年の参考値)
  4. 同じ学年で見た、6年の時点と10年の時点
  5. 私立55校の全体像|平均75.09%、いちばん高い大学・低い大学
  6. 私立55校の全順位(10年での合格率が高い順)
  7. この数字で、これからが決まるわけではない
  8. 10年たって、まだ籍がある人はごくわずか(長期在籍者の割合)
  9. 入学から10年後の4つの分かれ方
  10. 国立の参考値
  11. 数字を見るときの注意
  12. よくある疑問
  13. まとめ
  14. データ出典と数字の見方
  15. 動画でも解説しています

10年での合格率とは|入学から10年目の国家試験までに合格した人の割合

10年での合格率は、入学した人のうち、入学から10年目の国家試験までに合格した人の割合です。卒業したあと、次の年以降に受け直して合格した人も含みます。

たとえば、2015年度に入学した人なら、10年目は2024年度です。その年度に行われた国家試験までが対象になります。6年で卒業した人なら、10年目までに、国家試験を5回受けられる計算です。

もとになっている調査

もとになっているのは、文部科学省の「薬学部の6年制課程における退学状況等」という調査です。大学ごと・入学年度ごとに、卒業率や退学等の割合、国家試験の合格率が載っています。

この記事の数字は、その表の「薬剤師国家試験の合格率」のうち、各調査でいちばん古い入学年度の欄の値です。

文部科学省も、この調査の表の中で「標準修業年限+4年(10年)」という区切りを使っています(長期在籍者の欄の見出し)。標準の6年に4年を足した、10年という区切りです。なお、「10年での合格率」という呼び名は、当チャンネルの呼び方です。

10年目で区切った数字であること

10年目の国家試験までで区切った数字なので、その後に合格した人は入っていません。

また、国家試験は、卒業見込みで受けることもできますが、卒業できなければ、その受験は無効になります。そのため、この数字の合格者は、卒業した人の中から数えられています。

分母と対象|入学した人が分母・私立55校

この記事の数字も、ストレート合格率と同じく、入学した人を分母にしています。国家試験を受けた人のうち、何人が合格したか、ではありません。入学した人のうち、です。

これまでの記事では、6年で終わらない人を、分母を変えて見てきました。この記事は、そのシリーズの3本目です。

数字 分母
ストレート合格率・退学率・10年での合格率(この記事)入学した人
卒業した人のうち、6年で卒業した人の割合(卒業までにかかった年数の記事)卒業した人
卒業留年率(前回の記事)その年度の6年生全体

分母が違うので、この記事の数字は、前の2本の記事の数字とは別のものです。なお、この記事の数字は、すべて薬学部の6年制課程のものです。

比べるのは私立55校

比べるのは、私立55校です。これまでの記事の私立56校から、慶應義塾大学を除いています。

慶應義塾大学は、2014年度に入学した人の数字に、公表資料の中で合わないところがあるため、3年分の平均を出していません。具体的には、合格率(91.9%)が卒業率(91.3%)を上回っています。合格者は卒業した人の中から数えるので、本来は起こらない組み合わせです。

数字は、2013年度・2014年度・2015年度に入学した人の、3年分の平均です。

今のストレート合格率が高い大学・低い大学の、10年での合格率(別の学年の参考値)

ここからが本題です。先に結論を書くと、今のストレート合格率が高い大学ほど、少し前に入学した人たちの10年での合格率も高い傾向があります。

ストレート合格率は、入学した人のうち、6年で卒業して、その年度の国家試験に合格した人の割合です(文部科学省の名称は「標準修業年限での国家試験合格率」)。

ストレート合格率の記事で見た値は、2017〜2019年度に入学した人たちの数字でした。この記事の10年での合格率は、それより4年前の、2013〜2015年度に入学した人たちの数字です。

つまり、ここで並べる2つの数字は、別の学年の人たちのものです。同じ人たちを追いかけた数字ではありません。

グループ ストレート合格率(2017〜2019年度入学) 10年での合格率(2013〜2015年度入学)
上位9校74.92%88.00%
低いほうの10校30.81%54.45%

※ 各グループの単純平均です(1校を1つとして数えた平均・当チャンネルの計算)。

※ 2つの列は、別の学年の人たちの数字です。同じ人たちを追った数字ではありません。

※ 上位9校=ストレート合格率の上位10校(私立56校中)のうち、10年での合格率の平均を出している9校です(慶應義塾大学を除く)。低いほうの10校=ストレート合格率の下位10校です。

図1:ストレート合格率が高い大学・低い大学の、10年での合格率(別の学年の参考値)。上位9校はストレート合格率74.92%(2017〜2019年度入学)・10年での合格率88.00%(2013〜2015年度入学)、低いほうの10校は30.81%・54.45%。2つの値は矢印でつながず、別の列に置いた棒グラフ

上位9校(ストレート合格率が高い順)

ストレート合格率が高い上位10校のうち、10年での合格率の平均を出している9校です。

大学 ストレート合格率(2017〜2019年度入学・3年平均) 10年での合格率(2013〜2015年度入学・3年平均)
北里大学81.67%91.10%
福岡大学76.87%92.23%
星薬科大学76.37%95.20%
京都薬科大学75.70%90.23%
東邦大学74.10%90.87%
近畿大学73.70%76.83%
明治薬科大学73.53%90.17%
東京理科大学72.30%89.20%
武蔵野大学70.07%76.13%

9校の単純平均:ストレート合格率 74.92%/10年での合格率 88.00%

※ 並びは、ストレート合格率の高い順です(私立56校中の上位10校から、慶應義塾大学を除いた9校)。慶應義塾大学(ストレート合格率2位)は、10年での合格率の3年平均を出していないため載せていません。

※ 2つの列は、別の学年の人たちの数字です。

※ 徳島文理大学は、徳島と香川の2つの薬学部を別々に数えています。

※ 大学名は現在の名称です。統合・名称変更の前の大学に入学した人を含みます。

たとえば、ストレート合格率が1位の北里大学は、ストレート合格率が81.67%で、少し前に入学した人たちの10年での合格率は、91.10%でした。9校の10年での合格率は、76.13%から95.20%までです。

低いほうの10校(ストレート合格率が高い順)

大学 ストレート合格率(2017〜2019年度入学・3年平均) 10年での合格率(2013〜2015年度入学・3年平均)
医療創生大学38.00%45.17%
城西大学37.17%52.90%
横浜薬科大学36.37%59.73%
兵庫医科大学35.17%73.10%
城西国際大学31.80%54.83%
大阪大谷大学30.90%75.40%
青森大学30.20%45.90%
第一薬科大学26.57%56.80%
千葉科学大学21.03%34.00%
日本薬科大学20.90%46.67%

10校の単純平均:ストレート合格率 30.81%/10年での合格率 54.45%

※ 並びは、ストレート合格率の高い順です(私立56校中の47〜56位)。

※ 2つの列は、別の学年の人たちの数字です。

※ 医療創生大学は2026年度から薬学部の学生募集を停止しています。城西国際大学は2027年度から停止すると発表しています。どちらも過去に入学した学生のデータなので、対象に含めています。

※ 大学名は現在の名称です。統合・名称変更の前の大学に入学した人を含みます。

この10校の10年での合格率は、34.00%から75.40%まで、幅があります。

私立55校すべてで見ると

私立55校すべてで見ると、今のストレート合格率が高い大学ほど、少し前に入学した人たちの10年での合格率も高い傾向があり、相関係数は0.858でした。

図2:私立55校の散布図。横軸はストレート合格率(2017〜2019年度入学・3年平均)、縦軸は10年での合格率(2013〜2015年度入学・3年平均)。1つの点が1つの大学の薬学部。今のストレート合格率が高い大学ほど、10年での合格率も高い傾向があり、相関係数は0.858

2つは別の学年の数字ですが、それでも、これだけ強い傾向が出ています。今のストレート合格率の3年平均は、その大学に少し前に入学した人たちの実績とも、よく重なっているということです。

このことからも、大学を選ぶときに、ストレート合格率の3年平均を見ることには、意味があると考えています。

同じ学年で見た、6年の時点と10年の時点

では、同じ人たちで見ると、どうでしょうか。ここからは、2013〜2015年度に入学した、同じ人たちの、6年の時点と10年の時点を比べます。

6年の時点の数字は、文部科学省の「薬学部における修学状況等」という別の調査にある、この学年のストレート合格率です。グループは、前の節と同じ大学です(今のストレート合格率で選んだ上位9校と、低いほうの10校)。

グループ 6年の時点 10年目の国家試験まで
上位9校75.33%88.00%
低いほうの10校34.73%54.45%

※ どちらも2013〜2015年度に入学した、同じ人たちの数字です。各グループの単純平均です。

※ 6年の時点=2013〜2015年度入学の人たちのストレート合格率(第104〜106回)。文部科学省「薬学部における修学状況等」令和元〜3年度調査。

図3:同じ人たち(2013〜2015年度入学)の6年の時点と10年の時点。上位9校は75.33%から88.00%へ、低いほうの10校は34.73%から54.45%へ。同じ人たちの数字なので矢印でつないだ図

同じ人たちの数字なので、6年のあとに合格した人の分だけ、増えています。

上位9校:同じ人たちの6年の時点と10年の時点

大学 6年の時点(2013〜2015年度入学) 10年の時点(同じ学年)
北里大学80.77%91.10%
福岡大学71.33%92.23%
星薬科大学83.30%95.20%
京都薬科大学73.40%90.23%
東邦大学74.37%90.87%
近畿大学72.50%76.83%
明治薬科大学76.03%90.17%
東京理科大学80.80%89.20%
武蔵野大学65.50%76.13%

9校の単純平均:6年の時点 75.33% → 10年の時点 88.00%

10年の時点では、9校のうち6校が、90%を超えています。

低いほうの10校:同じ人たちの6年の時点と10年の時点

大学 6年の時点(2013〜2015年度入学) 10年の時点(同じ学年)
医療創生大学29.90%45.17%
城西大学38.87%52.90%
横浜薬科大学34.20%59.73%
兵庫医科大学51.10%73.10%
城西国際大学29.57%54.83%
大阪大谷大学50.17%75.40%
青森大学25.87%45.90%
第一薬科大学27.13%56.80%
千葉科学大学29.20%34.00%
日本薬科大学31.33%46.67%

10校の単純平均:6年の時点 34.73% → 10年の時点 54.45%

※ 6年の時点=2013〜2015年度入学の人たちのストレート合格率(第104〜106回・文部科学省「薬学部における修学状況等」令和元〜3年度調査)。10年の時点と同じ学年です。

※ 並びは、前の節と同じ(今のストレート合格率の高い順)です。

※ 医療創生大学は2026年度から薬学部の学生募集を停止しています。城西国際大学は2027年度から停止すると発表しています。どちらも過去に入学した学生のデータなので、対象に含めています。

※ 大学名は現在の名称です。統合・名称変更の前の大学に入学した人を含みます。

上位9校も、この10校も、どこも、6年の時点より、10年の時点のほうが高くなっています。

増えた人は、どちらの経路か

増えた人が、6年で卒業したあと、次の年以降に受け直して合格したのか、卒業が遅れてから合格したのかは、この資料では分けられません。

どちらの場合も、6年より長い時間がかかっていて、そのぶん、薬剤師の免許を受けられる時期も遅れています。

6年の時点で合格した人が多い大学は、増える余地が小さい

ここで、数字の読み方の注意を1つ。

低いほうの10校のほうが、6年から10年で、大きく増えています。でも、上位9校は、6年の時点の平均が、すでに75.33%でした。

6年の時点で合格した人が多い大学は、そもそも増える余地が小さい、という点も見ておく必要があります。

私立55校の全体像|平均75.09%、いちばん高い大学・低い大学

10年での合格率を、私立55校で単純に平均すると、75.09%でした。1校を1つとして数えた平均です。

私立55校で見ると(2013〜2015年度入学) 値
10年での合格率の単純平均75.09%
いちばん高い大学95.20%(星薬科大学)
いちばん低い大学34.00%(千葉科学大学)
10年での合格率が90%を超える大学8校
10年での合格率が50%を下回る大学5校
10年での合格率が100%の大学0校

※ 単純平均は、1校を1つとして数えた平均です(当チャンネルの計算)。入学した人の人数を合計して割った値ではありません。

※ 私立55校=これまでの記事と同じ私立56校から、慶應義塾大学を除いた数です。

※ 徳島文理大学は、徳島と香川の2つの薬学部を別々に数えています。

いちばん高いのは、星薬科大学で95.20%、いちばん低いのは、千葉科学大学で34.00%でした。

同じ学年の6年の時点の数字は、星薬科大学が83.30%、千葉科学大学が29.20%です。

私立55校の全順位(10年での合格率が高い順)

私立55校すべての、10年での合格率です。右端には、参考として、今のストレート合格率(2017〜2019年度入学の3年平均)も載せています。2つの列は、別の学年の数字です。

順位 大学 10年での合格率(2013〜2015年度入学・3年平均) 参考:ストレート合格率(2017〜2019年度入学・3年平均)
1位星薬科大学95.20%76.37%
2位福岡大学92.23%76.87%
3位昭和医科大学91.97%67.07%
4位北里大学91.10%81.67%
5位東邦大学90.87%74.10%
6位崇城大学90.63%64.53%
7位京都薬科大学90.23%75.70%
8位明治薬科大学90.17%73.53%
9位東京理科大学89.20%72.30%
10位神戸薬科大学89.07%67.97%
11位大阪医科薬科大学88.83%69.13%
12位同志社女子大学88.47%65.17%
13位安田女子大学86.67%59.53%
14位東京薬科大学86.50%66.20%
15位昭和薬科大学85.17%68.13%
16位金城学院大学85.07%66.47%
17位日本大学84.30%58.57%
18位東北医科薬科大学83.70%63.53%
19位立命館大学83.07%68.67%
20位高崎健康福祉大学82.77%58.23%
21位摂南大学81.47%62.13%
22位広島国際大学※80.50%40.43%
23位名城大学80.10%69.90%
24位帝京大学79.53%58.30%
24位神戸学院大学79.53%48.67%
26位武庫川女子大学77.50%51.03%
27位長崎国際大学77.47%54.10%
28位近畿大学76.83%73.70%
29位就実大学76.20%52.57%
30位武蔵野大学76.13%70.07%
31位北海道科学大学76.00%52.10%
32位福山大学75.50%59.27%
33位大阪大谷大学75.40%30.90%
34位帝京平成大学75.27%44.33%
35位国際医療福祉大学75.13%53.47%
36位北海道医療大学74.43%46.93%
37位徳島文理大学(薬学部)74.00%48.53%
38位愛知学院大学73.17%55.00%
38位鈴鹿医療科学大学73.17%50.13%
40位兵庫医科大学73.10%35.17%
41位新潟薬科大学72.60%41.73%
42位松山大学70.27%40.07%
43位岩手医科大学64.47%40.10%
44位九州医療科学大学63.30%40.63%
45位徳島文理大学(香川薬学部)61.00%47.47%
46位横浜薬科大学59.73%36.37%
47位北陸大学59.40%44.77%
48位第一薬科大学56.80%26.57%
49位城西国際大学54.83%31.80%
50位城西大学52.90%37.17%
51位奥羽大学47.00%38.93%
52位日本薬科大学46.67%20.90%
53位青森大学45.90%30.20%
54位医療創生大学45.17%38.00%
55位千葉科学大学34.00%21.03%

私立55校の単純平均:75.09%

※ 10年での合格率=入学した人のうち、入学から10年目の国家試験(2013年度入学は第108回、2014年度入学は第109回、2015年度入学は第110回)までに合格した人の割合です(卒業後に受け直して合格した人を含む)。文部科学省「薬学部の6年制課程における退学状況等」令和5〜7年度調査の「薬剤師国家試験の合格率」のうち、各調査でいちばん古い入学年度の値。3年平均=公表%の単純平均(小数第3位を四捨五入し、小数第2位まで表示)。「10年での合格率」は当チャンネルの呼び方です。

※ 順位=私立55校中の順位です(10年での合格率が高い順・同じ値は同じ順位。24位の帝京大学と神戸学院大学は同じ79.53%のため次は26位、38位の愛知学院大学と鈴鹿医療科学大学は同じ73.17%のため次は40位)。

※ 参考のストレート合格率=入学した人のうち、6年で卒業し、その年度の国家試験に合格した人の割合。2017〜2019年度入学(第108〜110回)の3年平均。文部科学省「薬学部における修学状況等」令和5〜7年度調査。10年での合格率とは別の学年の数字です。

※ 私立55校=これまでの記事と同じ私立56校から、慶應義塾大学を除いた数です。慶應義塾大学は2014年度入学の値で、合格率(91.9%)が卒業率(91.3%)を上回っており(合格者は卒業した人の中から数えるため、本来は起こらない)、3年平均を出していません。新設で卒業生がまだいない5学部と、2025年度から募集停止の姫路獨協大学は、もとの56校に含みません。

※ 広島国際大学(22位)の2013年度入学の値(89.8%)は、同じ学年の他の公表値と合っていません。文部科学省の原典(退学状況等・令和5年度調査)では、同じ学年の卒業率が100.7%(定義上ありえない値)で、退学等の割合(18.2%)と合格率(89.8%)の合計も100%を超えています。原因は資料から分かりません。この表と私立55校の平均・相関係数には、公表された合格率をそのまま使っています。4つの分かれ方(のちの章)では、卒業率が使えないため広島国際大学を除いています。

※ 徳島文理大学は、徳島と香川の2つの薬学部を別々に数えています。

※ 医療創生大学は2026年度から薬学部の学生募集を停止しています。城西国際大学は2027年度から停止すると発表しています。どちらも過去に入学した学生のデータなので、対象に含めています。

※ 国際医療福祉大学は、薬学部(栃木県大田原市)の値です。

※ 大学名は現在の名称です。統合・名称変更の前の大学に入学した人を含みます。

※ 6年制課程のみ。編入学者は含みません。

この数字で、これからが決まるわけではない

ここまで、低いほうの大学も、名前と数字で見てきました。

これは、2013〜2015年度に入学した人たちの、過去の実績です。これから入学する人がどうなるかを、決めるものではありません。

6年で届かなかった人の中にも、10年目までに合格した人がいます。ただ、その人たちは、6年より長い時間と費用をかけています。

そして、上位の大学にも、10年目の国家試験までに合格していない人はいます。私立で、10年での合格率が100%の大学は、ありません。

10年たって、まだ籍がある人はごくわずか(長期在籍者の割合)

入学から10年たった時点で、まだ大学に籍がある人は、ごくわずかです。前回の記事の最後でお伝えした、長期在籍者の割合です。

長期在籍者は、入学から10年(標準の6年+4年)たった時点で、在籍している人です。休学している人も含みます。

長期在籍者の割合(2013〜2015年度入学・3年平均) 値
私立56校の単純平均0.52%
3年平均が4%未満の大学私立56校すべて

※ 長期在籍者の割合=入学から10年(標準修業年限+4年)たった時点で在籍している人の割合(休学中を含む)。文部科学省「薬学部の6年制課程における退学状況等」令和5〜7年度調査。

※ この表だけ、私立56校(慶應義塾大学を含む)の単純平均です。10年での合格率の55校とは校数が違います。

※ 徳島文理大学は、徳島と香川の2つの薬学部を別々に数えています。

ほとんどの人は、10年たつまでに、卒業したか、退学などで籍を離れたかの、どちらかになっています。つまり、10年での合格率は、大学に残っている人が、ほとんどいない時点の数字です。

ただし、卒業した人の中には、10年目の国家試験までに合格していない人もいます。

入学から10年後の4つの分かれ方

入学した人は、10年たった時点で、4つに分かれます。10年目までに合格した人、卒業したけれど10年目の国家試験までに合格していない人、退学などで籍を離れた人、そして、まだ在籍している人です。

4つの値がすべてそろう私立54校で平均すると、次のとおりでした。

区分 54校の単純平均
① 10年目までに合格した人74.99%
② 卒業したけれど、10年目の国家試験までに合格していない人7.09%
③ 退学などで籍を離れた人17.39%
④ まだ在籍している人0.53%
合計100.00%
図4:入学から10年たった時点の、4つの分かれ方(私立54校の単純平均)。①10年目までに合格74.99%、②卒業したが10年目の国家試験までに合格していない7.09%、③退学などで籍を離れた17.39%、④まだ在籍している0.53%を、1本の横棒に積み上げた図

※ 4つの値がすべてそろう54校(私立55校から広島国際大学を除く)の単純平均です。広島国際大学は、原典の卒業率に定義上ありえない値(100.7%)があるため除いています。

※ ②=卒業率 − 10年での合格率(当チャンネルの計算)。

※ ③退学など=退学・転学・転学部・転学科・除籍等(文部科学省「退学等の割合」)。

※ 55校で計算すると、①は75.09%、④は0.52%です。

4つの値がすべてそろう54校で平均しているため、全体像の75.09%(55校)や、長期在籍者の0.52%(56校)とは、少しずれています。

卒業したけれど、まだ合格していない人は、その後も国家試験を受けることができます。また、退学などには、ほかの大学に移った人も含まれます。

この「退学など」は、退学率ランキングの記事で見た退学率と同じ種類の数字です。ただ、この記事の値は、2013〜2015年度に入学した人の、10年たった時点の数字です。

上位9校と低いほうの10校で比べる

この4つの分かれ方を、前の節の2つのグループで比べてみます。今のストレート合格率が高い上位9校と、低いほうの10校です。

区分 上位9校の平均 低いほうの10校の平均
① 10年目までに合格した人88.00%54.45%
② 卒業したけれど、10年目の国家試験までに合格していない人5.33%11.65%
③ 退学などで籍を離れた人6.39%32.72%
④ まだ在籍している人0.31%1.19%
図5:入学から10年たった時点の、4つの分かれ方(2013〜2015年度入学)を、上位9校と低いほうの10校で比べた2本の積み上げ横棒。上位9校は①88.00%・②5.33%・③6.39%・④0.31%、低いほうの10校は①54.45%・②11.65%・③32.72%・④1.19%

※ 上位9校・低いほうの10校=今のストレート合格率(2017〜2019年度入学・私立56校中)の上位10校・下位10校です。4分類は、その大学に2013〜2015年度に入学した人たちの値です。

※ 4つの値がすべてそろう大学の単純平均です(上位は慶應義塾大学を除く9校)。②=卒業率 − 10年での合格率(当チャンネルの計算)。

※ 各大学の公表値が小数第1位で丸められているため、4つを足しても100%ちょうどにはなりません。

合格した人のほかに、大きく違うのが、退学などで籍を離れた人です。上位9校の6.39%に対して、低いほうの10校では32.72%でした。

卒業したけれど、10年目の国家試験までに合格していない人も、低いほうの10校のほうが多くなっています。

また、グループを選ぶ際に基準にしたのは今のストレート合格率で、4つの分かれ方は、2013〜2015年度に入学した人たちの数字です。

国立の参考値

参考として、国立も見ておきます。国立14校の10年での合格率を、単純に平均すると、93.43%でした。

国立は、私立とは規模や仕組みが違うので、私立の順位とは比べず、参考の値として見てください。

※ 国立14校の3年平均(2013〜2015年度入学)の単純平均です(当チャンネルの計算)。

※ 学部で一括して入学し、あとから6年制の学科に分かれる国立大学は、6年制課程に在籍が決まった時点の人数が分母です。

数字を見るときの注意

時間をかければ、合格する人は増えます。ただ、その分だけ、時間と費用がかかっています。そして、私立では、どの大学でも、10年たっても合格していない人がいます。

一方で、同じ学年で比べると、10年の時点の数字が、6年の時点より低い大学は、1つもありませんでした。

数字 何を表すか 分母
ストレート合格率6年で届いた人の割合入学した人
10年での合格率時間をかけた人も含めた割合入学した人

※ 「10年の時点が6年の時点より低い大学は無い」は、6年の時点と10年の時点の両方の値がそろう65校(国公私立)で確かめました。

よくある疑問

Q. 10年での合格率は、薬剤師になれた人の割合ですか?

違います。国家試験に合格した人の割合です。

10年目の国家試験より後に合格した人は入っていません。卒業したけれどまだ合格していない人は、その後も国家試験を受けることができます。また、退学などで籍を離れた人には、ほかの大学に移った人も含まれます。

薬剤師の免許は、国家試験に合格した人が申請し、薬剤師名簿に登録されて与えられます。この調査は合格までを数えたもので、免許の登録までは分かりません。

Q. 厚生労働省が発表している、国家試験の合格率とは何が違いますか?

分母が違います。厚生労働省の合格率は、国家試験を受けた人のうち、合格した人の割合です。10年での合格率は、入学した人のうち、10年目の国家試験までに合格した人の割合です。

入学したあとに退学などで籍を離れた人や、卒業できずに受験しなかった人も、10年での合格率では分母に入っています。

Q. 慶應義塾大学が入っていないのはなぜですか?

2014年度に入学した人の値で、合格率(91.9%)が卒業率(91.3%)を上回っているためです。

合格者は卒業した人の中から数えるので、本来は起こらない組み合わせです。公表資料の中で合わないところがあるため、この記事では3年平均を出していません。

Q. 今のストレート合格率から、これから入学する人の10年での合格率が分かりますか?

予測するための数字ではありません。どちらも、過去に入学した人たちの実績です。

私立55校で見ると、今のストレート合格率が高い大学ほど、少し前に入学した人たちの10年での合格率も高い傾向がありました。そのため、大学を選ぶときに、まずストレート合格率の3年平均を見ておく意味はあると、当チャンネルは考えています。

まとめ

  • 10年での合格率は、入学した人のうち、入学から10年目の国家試験までに合格した人の割合です。2013〜2015年度に入学した人で、私立55校の平均は75.09%でした
  • 今のストレート合格率が高い大学は、少し前に入学した人たちの10年での合格率も、高い傾向があります
  • 同じ学年で見ると、6年のあとに合格した人の分だけ増えますが、私立では、どの大学にも、10年たっても合格していない人がいます

これで、入学した人を分母にした数字は、ストレート合格率、退学率、そしてこの記事の10年での合格率と、ひととおりそろいました。

入学前に知っておいてほしいこと

入学したからといって、全員が6年で合格しているわけではありません。6年目の国家試験より後に合格した人は、そのぶん、時間と費用をかけています。

留年すると、学費と生活費だけでも1年で数百万円かかります。さらに、働き始めるのが1年遅れ、将来の収入が1年分失われると考えると、損失の合計はもっと大きくなります。

入学前にストレート合格率を見ておく意味は、ここにあります。

そのうえで、毎日の学習の積み重ねが、国家試験へつながる道だと、薬学部受験情報館は考えています。入学はゴールではなく、スタートです。この記事が、そのスタートを切る前の準備に役立てばうれしいです。

データ出典と数字の見方

  • 10年での合格率の出典:文部科学省「薬学部の6年制課程における退学状況等」令和5〜7年度調査。表の「薬剤師国家試験の合格率」のうち、各調査でいちばん古い入学年度(令和5年度調査=2013年度入学・令和6年度調査=2014年度入学・令和7年度調査=2015年度入学)の値です
  • 調査によって値が違う大学があります:文部科学省の資料では、同じ入学年度の「薬剤師国家試験の合格率」が、調査によって違う大学があります(後の調査のほうが小さくなっている大学:近畿大学・武庫川女子大学・日本薬科大学・奥羽大学など。例:近畿大学の2013年度入学は、令和4年度調査で85.8%、令和5年度調査で77.3%)。この記事の「10年での合格率」は、各入学年度が最後に載っている調査(2013年度入学=令和5年度調査、2014年度入学=令和6年度調査、2015年度入学=令和7年度調査)の値をそのまま使っています。理由は、資料からは分かりません
  • 合格者の数え方:その年度に入学し、すでに卒業した人のうち、10年目の国家試験(2013年度入学は第108回、2014年度入学は第109回、2015年度入学は第110回)までの、いずれかの国家試験に合格した人です。卒業後に受け直して合格した人を含みます
  • 分母:入学した人です(編入学者は含みません)
  • 6年の時点の出典:文部科学省「薬学部における修学状況等」令和元〜3年度調査の、2013〜2015年度入学の人たちのストレート合格率(第104〜106回)です
  • ストレート合格率(今の3年平均)の出典:同「薬学部における修学状況等」令和5〜7年度調査。2017〜2019年度入学(第108〜110回)の3年平均です
  • 長期在籍者の割合・卒業率・退学等の割合の出典:同「薬学部の6年制課程における退学状況等」令和5〜7年度調査です
  • 3年平均:3つの調査の公表%(小数第1位)の単純平均を、小数第3位で四捨五入し、小数第2位まで表示しています。3年分そろう大学だけ出しています
  • 比べる大学:私立55校(これまでの記事の私立56校から、慶應義塾大学を除く)。新設で卒業生がまだいない5学部(湘南医療大学・岐阜医療科学大学・国際医療福祉大学の福岡薬学部と成田薬学部・順天堂大学)と、2025年度から募集停止の姫路獨協大学は、もとの56校に含みません
  • 平均:大学ごとの割合の単純平均です(1校を1つとして数えた平均・当チャンネルの計算)。入学した人の人数を合計して割った値ではありません
  • 4つの分かれ方:4つの値がすべてそろう54校(私立55校から広島国際大学を除く)の単純平均です。②は卒業率から10年での合格率を引いた値です(当チャンネルの計算)
  • 6年の時点がそろわない大学:大阪医科薬科大学は、2013・2014年度入学の「入学時」の人数が公表されていないため、同じ学年の6年の時点の3年平均を出していません(前の節の20校には入っていません)
  • 大学名:現在の名称です。統合・名称変更の前の大学に入学した人を含みます
  • 対象:6年制課程のみです。4年制課程は含みません
  • 国立:参考値として別に示し、私立の順位には入れていません

動画でも解説しています

この記事の内容は、YouTubeの動画でも解説しています。

  • 動画:薬学部|ストレート合格率が低い大学、10年後は?
  • URL:https://youtu.be/FNzVQiQzDgw

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シカラボ(shika-lab)
シカラボ(shika-lab)
公式データで薬学部を分析
薬学部受験情報館を運営しているシカラボです。 教育機関で10年以上、歯学部のデータを扱ってきました。 その方法で、入学者を分母にしたストレート合格率・退学率など、見落とされやすい指標を、厚生労働省・文部科学省・各大学公式サイトの一次資料から分析しています。
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