薬剤師は余る?足りない?|国の推計と財務省の資料

薬学部受験情報館

薬剤師は、将来、余るのでしょうか。それとも、足りないのでしょうか。

厚生労働省の検討会が2021年6月30日にまとめた報告書には、将来、薬剤師が過剰になると書かれています。ところが同じ報告書には、今は地域の偏りなどから、特に病院を中心に、薬剤師が足りておらず、不足感が生じている、とも書かれています。

この記事では、国の需給推計が、何を数えて、何を仮定しているかを順番に整理します。国による薬学部の定員の抑制と、財務省の審議会の資料や建議もあわせて読みます。そのうえで、これから薬学部を目指すのは、ありなのかを考えます。薬学部を目指す受験生と、保護者のかたに向けた記事です。

この記事の要点

  • 国の需給推計(厚生労働省の検討会・2021年)は、供給に2つ、需要に2つの仮定を置いた幅のある試算です。2045年は、供給43.2万〜45.8万人、需要33.2万〜40.8万人と見込まれ、どの組み合わせでも供給が需要を上回ります。ただし、その差は、仕事に就けない人の数ではありません
  • 全国の人数の話と、病院や地域で足りないという話は、別の物差しです。だから、同じ報告書に「過剰になる」と「不足感が生じている」の両方が書かれていても、矛盾しません
  • 国は、6年制の薬学科の新設と定員増を、2025年度から原則として認めていません。財務省が財政制度分科会に示した資料と、同じ主張を盛り込んだ財政制度等審議会の建議(政策の提言)は、医学部・歯学部とあわせて大胆な定員削減を求めています。ただし、薬学部の定員削減は、国の決定ではありません

※ この記事の推計は2021年のものです。厚生労働省は、2026年9月30日の懇談会の資料で、この推計を「今年度再算出予定」と書いています(公表の時期は、資料には書かれていません)。


目次

  1. 国の薬剤師の需給推計とは|2021年・2020〜2045年・仮定の幅
  2. 供給の数え方|2045年は43.2万〜45.8万人
  3. 需要の数え方|2045年は33.2万〜40.8万人
  4. 推計の読み方|2045年はどの組み合わせでも供給が上回る
  5. この推計から言えること・言えないこと
  6. それでも「足りない」と書かれている理由|2つの物差し
  7. 薬学部の定員の抑制|2025年度から新設・定員増を原則認めない
  8. 財務省の審議会の提言|4月の分科会資料と6月の建議
  9. 建議と骨太の方針|薬学部の定員削減は国の決定ではない
  10. 薬学部を目指すのは、あり?|当チャンネルの考え
  11. よくある疑問
  12. まとめ
  13. データ出典と数字の見方
  14. 動画でも解説しています

国の薬剤師の需給推計とは|2021年・2020〜2045年・仮定の幅

国の薬剤師の需給推計は、1本の予測の線ではありません。供給に2つ、需要に2つの仮定を置いて、2045年までの見込みを幅で示した試算です。

使うのは、厚生労働省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」が、2021年6月30日にまとめた報告書(とりまとめ)と、同じ検討会の第8回の資料「薬剤師の需給推計(案)」です。薬剤師が、これから何人いて、何人必要になるかを、2020年から2045年まで見積もっています。

  • 供給:薬剤師が何人いるか
  • 需要:薬剤師が何人必要か

供給2つ・需要2つの仮定

推計が置いている仮定と、2045年の見込みは、次のとおりです。

区分 置いている仮定 2045年の見込み
供給国家試験の合格者が、近年と同じくらいの人数で続く45.8万人
供給大学に進学する人の減少に合わせて、合格者が減る43.2万人
需要薬剤師の仕事の中身が、今のまま続く33.2万人
需要薬剤師の仕事が充実して、需要が増える37.2万〜40.8万人

※ 推計のはじまりの2020年は、供給32.5万人、需要32.0万人です。

※ 出典:厚生労働省「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 とりまとめ」(2021年6月30日)・同検討会 第8回 資料1「薬剤師の需給推計(案)」。

推計の資料自身も、この数字は仮定の上に立つものだと書いています。

推計した数値は仮定条件をおいて試算したものであり、条件によって試算は変わりうるものである

(厚生労働省 薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 第8回 資料1「薬剤師の需給推計(案)」p2)

推計は2021年のもの|2026年9月30日の資料に「今年度再算出予定」

これは2021年の推計です。厚生労働省は、2026年9月30日に開かれた「薬剤師のキャリアパスに関する懇談会」の資料で、この推計を次のように示しています。

薬剤師の需給推計(令和2年度時点)※今年度再算出予定

(厚生労働省 薬剤師のキャリアパスに関する懇談会 第2回 資料2 p3)

計算し直した推計の公表時期は、資料には書かれていません。この記事の数字は、2021年の推計の数字として読んでください。

供給の数え方|2045年は43.2万〜45.8万人

推計の供給は、いま薬剤師として働いている人の数ではありません。届け出た薬剤師をもとに、亡くなる人と80歳を超える人だけを差し引き、新しい国家試験の合格者を加えて数えた人数です。

図1:供給の数え方。平成30年(2018年)に国の統計に届け出た薬剤師(無職と届け出た人も含む)をもとに、年齢ごとの生存率で80歳までの人数を見積もり(引退や休職は差し引かない)、毎年の国家試験の合格者(仮定)を加える。2045年の供給は、合格者が近年と同じくらいなら45.8万人、大学進学者の減少を考えると43.2万人。推計のはじまりの2020年は32.5万人

もとにするのは、平成30年に届け出た薬剤師

供給の計算は、次の3つの段階でできています。

  1. もとにする数:平成30年(2018年)に、国の統計(医師・歯科医師・薬剤師統計)に届け出た薬剤師です。無職と届け出た人も入っています
  2. 減らし方:その人たちが、年齢ごとの生存率で減っていくとして、80歳までの人数を見積もります。減る人として数えているのは、亡くなる人と80歳を超える人だけです。引退や休職で仕事を離れる人は、差し引いていません
  3. 加え方:そこに、毎年、新しく国家試験に合格した人が加わります。何人加わるかは、2つの仮定で置いています

合格者の2つの仮定と、2045年の見込み

2045年の供給は、合格者が近年と同じくらいの人数で続くなら45.8万人、大学に進学する人が減るのに合わせて合格者も減っていくと考えると43.2万人と見込まれています。

推計のはじまりの2020年は、32.5万人でした。この32.5万人は推計のはじまりの年の値で、もとにした平成30年の届け出の人数とは、別の数です。

なお、この推計は2021年のものです。あとの章で紹介する、2023年の薬学部の定員の抑制を、前提にしたものではありません。

需要の数え方|2045年は33.2万〜40.8万人

推計の需要は、求人の数ではありません。薬局で受け付ける処方箋の枚数や、病院のベッドの数などから、必要な薬剤師の人数を計算したものです。

ここにも、2つの仮定があります。

仕事の中身が今のままの場合|2045年は33.2万人

1つ目は、薬剤師の仕事の中身が、今のまま続く、という仮定です。この場合、2045年の需要は33.2万人です。

途中、2029年から2030年ごろの33.6万人がいちばん多く、その後は少し減る見込みです。

仕事が充実する場合|2045年は37.2万〜40.8万人

2つ目は、薬剤師の仕事が充実して、需要が増える、という仮定です。この場合、2045年の需要は37.2万〜40.8万人です。

ここでいう仕事の充実とは、次のような仕事を増やしていくことです。

  • 患者さんの家を訪ねる、在宅の仕事
  • 健康の相談にのる仕事
  • 病院の病棟で、医師と一緒に薬を考える仕事

たとえば、急性期の病院のベッドでは、薬剤師の仕事の量が、2045年までに最大で1.5倍になる、と仮定しています。あわせて、薬をそろえる仕事は、効率よくしていくことが前提になっています。

需要の幅を1つにまとめると、2045年は33.2万〜40.8万人です。下の端の33.2万人は「仕事の中身が今のまま」、37.2万人は「仕事が充実する」場合の下の端です。推計のはじまりの2020年の需要は、32.0万人でした。

需要には、無職の人も入っている

需要の中には、平成30年の統計で10,339人いた無職の人が、同じ数のまま入っています。

そのため、需要は、求人の数ではなく、「必要と計算された人数」です。

推計の読み方|2045年はどの組み合わせでも供給が上回る

2045年には、供給のいちばん少ない見込み(43.2万人)が、需要のいちばん多い見込み(40.8万人)を上回ります。どの仮定の組み合わせでも、供給が需要を上回る見込み、ということです。

図2:供給と需要の見込み(2020年と2045年)。2020年は供給32.5万人・需要32.0万人。2045年は供給43.2万〜45.8万人、需要33.2万〜40.8万人(仕事の充実を考慮した場合は37.2万〜40.8万人)。2045年は、供給のいちばん少ない見込み43.2万人が、需要のいちばん多い見込み40.8万人を上回る

2020年は、ほぼ同じ

推計のはじまりの2020年は、供給32.5万人、需要32.0万人で、ほぼ同じです。

2021年の報告書は、次のように書いています。

概ね今後10年間は、需要と供給は同程度で推移する

(厚生労働省 薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 とりまとめ〈概要〉2021年6月30日 p2)

ただし、これは、仕事が充実して需要が増える、と仮定した場合の話です。仕事の中身が今のままなら、2045年の需要は33.2万人にとどまり、供給との差はもっと大きくなる見込みです。

仕事の充実が進まなければ、差は広がる

報告書は、仕事の充実が進まなかった場合についても書いています。

薬剤師業務の充実と資質向上に向けた取組が行われない場合は需要が減少し、供給数との差が一層広がることになると考えられる。

(厚生労働省 薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 とりまとめ 2021年6月30日 p8)

報告書が、薬剤師は将来、過剰になる、と書いているのは、仕事が充実して需要が増えると仮定しても、供給が需要を上回る見込みだからです。

この推計から言えること・言えないこと

供給が需要を上回る、とは、届け出た薬剤師をもとに数えた人数が、必要と計算された人数より多くなる見込み、ということです。それ以上のことは、この推計からは言えません。

言えること 言えないこと
届け出た薬剤師をもとに数えた人数が、必要と計算された人数より多くなる見込み供給と需要の差が、仕事に就けない人の数であること
2045年は、どの仮定の組み合わせでも、そうなる見込み年収・就職のしやすさ・国家試験の難しさが、どうなるか
仮定をおいた試算で、条件によって変わりうるどの地域・どの職場で足りないか
2021年の時点の推計で、厚生労働省は2026年9月30日の資料に「今年度再算出予定」と書いている―

差が仕事に就けない人の数でないのは、供給は引退した人や休んでいる人も差し引かずに数えていて、需要のほうも、求人の数ではないからです。また、この推計は人数を比べたもので、年収や、就職のしやすさ、国家試験の難しさとは、結びつけていません。

保護者のかたにも、一度出た数字だけで、進路を決めないでほしい、というのが、当チャンネルの考えです。

それでも「足りない」と書かれている理由|2つの物差し

全体の人数と、どこで足りないかは、別の物差しです。だから、余るという推計と、足りないという現状の見方は、両方とも成り立ちます。

冒頭でお話ししたとおり、報告書は、今の状況を次のように書いています。

現時点では地域偏在等により、特に病院を中心として薬剤師が充足しておらず、不足感が生じている。

(厚生労働省 薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 とりまとめ 2021年6月30日 p8)

この記事で見た推計の数字は、全国の人数を合わせたものです。どの地域で、どの職場で働くかという偏りは、全国の合計には表れません。

物差し 何を見ているか
全体の人数全国の薬剤師を合わせた数(この記事で見た推計の数字)
どこで働くかどの地域・どの職場(病院・薬局など)か。全国の合計には表れない偏り

どこで、どれくらい足りないのかは、別の動画と記事(薬剤師の偏在)で詳しく見ます。

薬学部の定員の抑制|2025年度から新設・定員増を原則認めない

国は、2025年度から、6年制の薬学科を新しく作ることと、定員を増やすことを、原則として認めていません。今ある大学の定員を、国が減らす制度ではありません。

2021年の報告書が求めたこと

推計を示した2021年の報告書は、将来、薬剤師が過剰になると予想される状況について、次のように書きました。

将来的に薬剤師が過剰になると予想される状況下では、(中略)入学定員数の抑制も含め教育の質の向上に資する、適正な定員規模のあり方や仕組みなどを早急に検討し、対応策を実行すべきである

(厚生労働省 薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 とりまとめ 2021年6月30日 p10)

一方で、同じ報告書は、「国家試験合格者数の抑制のみでの対応は望ましい方向とは言えず」とも書いています。国家試験の合格者の数を抑えるだけで対応するのは、望ましい方向とは言えない、ということです。

薬剤師国家試験の合格率の推移(第80〜111回)は、薬剤師国家試験の合格率の推移の記事で紹介しています。

2023年3月の告示

そして、文部科学省は、2023年3月29日に告示(国の機関が、決まりなどを公式に知らせるもの。文部科学省告示第34号)を公布しました。中身は、次のとおりです。

項目 内容
対象6年制の薬学科(臨床薬学に関する学科)。4年制の学科は対象外
抑えるもの学科の新設と、収容定員(全学年を合わせた学生の定員)を増やすこと(原則として認めない)
抑えないもの今ある大学の定員を、国が減らす制度ではない
適用2025年度に開設・定員増をする分から
例外薬剤師の確保が特に必要とされた地域で、都道府県の計画に基づく場合は、例外になりうる

※ 出典:文部科学省告示第34号(2023年3月29日公布)。

例外の対象になりうる地域が、どこで、どのような基準で決まったのかは、別の動画と記事(薬剤師の偏在)で取り上げます。

財務省の審議会の提言|4月の分科会資料と6月の建議

財務省に置かれた審議会である、財政制度等審議会も、医学部・歯学部・薬学部の定員を取り上げています。2026年4月23日の財政制度分科会で、財務省が資料を示しました。その資料の主張が、6月26日の建議(政策の提言)にも盛り込まれています。

日付 何が出たか まとめた主体
2026年4月23日財政制度分科会の資料(資料1)財務省が分科会に示した資料
2026年6月26日建議「人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営」財政制度等審議会(財務大臣に提出した政策の提言)

定員についての記述

建議は、医学部・歯学部・薬学部の定員を、まとめて取り上げています。歯科医師と薬剤師については、次のように書いています。

歯科医師・薬剤師についても、平成24年(2012年)以降、国家試験の合格者数が平均で定員数の8割程度となっており、既に定員数が過剰な状況にある。

(財政制度等審議会「人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営」2026年6月26日 p39)

そのうえで、次の主張をしています。

理系の学問分野間の人材配分の適正化の観点からも、医学部・歯学部・薬学部の大胆な定員削減に踏み切るべきである。

(同 p40)

これは、薬学部だけではなく、医学部と歯学部も含めた主張です。

「8割程度」は、入学した人のうち何割が合格したか、ではない

この「8割程度」は、4月の資料のグラフによると、各年の合格者の数を、6年前の定員と比べたものです。2012年から2026年までの各年について、その年の合格者数を、その6年前の定員数と比べた値の平均です。

入学した人のうち何割が合格したか(ストレート合格率など。定義はあとの章で説明します)とは、別の数字です。

薬局についての記述

同じ建議には、薬局についての記述もあります。

平成6年度(1994年度)から令和6年度(2024年度)の間で、薬局数は6割以上増加し、薬局に従事する薬剤師の数は3倍以上となっている。

(財政制度等審議会「人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営」2026年6月26日 p42)

4月の資料のグラフでは、数字は次のとおりです。

項目 はじめ おわり 建議の言い方
薬局の数3.9万施設(1994年)6.3万施設(2024年度末)6割以上の増加
薬局で働く薬剤師6.1万人19.7万人3倍以上

※ 「おわり」は、グラフの最後の年(薬局の数は2024年度末、薬局で働く薬剤師は2024年)の値です。

※ 数字は、2026年4月23日の分科会資料と、建議の参考資料(資料Ⅱ-2-13)に載っている同じグラフの値です(万単位)。建議本文の脚注にも、薬局数について「約3.9万から約6.3万へ」の記載があります。

※ グラフの出典は、薬局数が厚生労働省「衛生行政報告例」(1994年→2024年度末)、薬局で働く薬剤師が厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計」(1994年→2024年)です。

ここで見ておきたいのは、薬局の数や、薬局で働く薬剤師の数が、この30年で大きく増えた、という事実です。多い、少ないの評価は、ここではしません。

建議と骨太の方針|薬学部の定員削減は国の決定ではない

建議は、審議会の政策の提言です。薬学部の定員削減が、国の制度として決まったり、実施されたりした、という意味ではありません。

2つの資料の位置づけ

  • 4月23日の資料:その時点では、財務省が財政制度分科会に示した資料でした
  • 6月26日の建議:財政制度等審議会がまとめて、財務大臣に出した政策の提言です。まとめたのは、財務省ではなく審議会です

2021年からの文書を、出した主体と種類で並べると、次のようになります。

図3:薬剤師の需給と薬学部の定員に関する文書(2021〜2026年)。2021年6月30日 厚生労働省の検討会のとりまとめ(需給推計を含む報告書)、2023年3月29日 文部科学省告示第34号(2025年度から6年制の薬学科の新設・定員増を原則認めない)、2026年4月23日 財務省が財政制度分科会に示した資料、2026年6月26日 財政制度等審議会の建議(政策の提言)、2026年7月21日 骨太の方針2026(閣議決定。医学部の定員の削減に取り組む。薬学部の記述なし)、2026年9月30日 厚生労働省の懇談会の資料(需給推計は今年度再算出予定)

骨太の方針2026には、薬学部の記述はない

2026年7月21日に閣議決定された、政府の「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太の方針)には、医学部の定員について、次の記述があります。

地域の実情を考慮した2028年度以降の医学部定員の削減に取り組む

(内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」2026年7月21日閣議決定 p29)

一方で、薬学部の定員の削減は、書かれていません(2026年10月1日時点で、全文を検索して確かめています)。

厚生労働省の推計とは、見ているものが違う

財務省の審議会の資料と、厚生労働省の推計は、取り上げているものが違います。

資料 取り上げているもの
厚生労働省の需給推計(2021年)全国の薬剤師の人数の見込み(2020〜2045年)
財政制度分科会の資料・建議(2026年)定員・国家試験の合格者・薬局の数など

この先どうなるかは、これらの資料からは分かりません。

薬学部を目指すのは、あり?|当チャンネルの考え

ここからは、この記事のデータをふまえた、当チャンネルの考えです。結論から言うと、薬学部を目指すのは、ありだと考えます。ただし、条件があります。

数の面で、見ておくこと

まず、数の面では、供給が需要を上回る見込みを、きちんと見ておく必要があります。推計では、需要は、仕事が充実すると仮定しても、供給ほどには増えない見込みです。

それでも、推計では、どの仮定でも、2045年の需要は2020年の32.0万人を下回っていません。いちばん少ない見込みでも、33.2万人です。

一方で、報告書は、「今後の薬剤師業務が現状と変化がなく、調剤業務に比重を置いた状況が維持された場合、需要は増えず、更には機械化など対物業務の効率化により、全体として需要が減少することも考えられる」とも書いています(とりまとめ p7)。仕事の中身が今のままなら、という条件つきの見方です。だからこそ、仕事の中身が変わっていくことを前提にした、進路選びになります。

推計を示した報告書は、これからの薬剤師に、薬をそろえて渡すだけでなく、患者さんに向き合う仕事を求めています。

国家資格に届く学部

6年制の薬学部を卒業すると、薬剤師国家試験を受けることができます。合格して免許を申請すれば、薬剤師免許という国家資格を得られます。

この資格を持っていることは、大きな強みだと、当チャンネルは考えています。

薬局で働く女性の年齢構成から

女性の働き方については、国の委託調査の報告書が、薬局で働く女性の年齢構成から、次のように書いています。

薬局では、病院と比較すると産育休の後、復職が実現できている割合が高いことがうかがえる。

(厚生労働省「令和3年度 薬剤師確保のための調査・検討事業 報告書」p122)

詳しくは、薬剤師の年収の記事でも紹介しています。

ただし、資格に届いてこそ

ただし、こうした魅力は、国家試験に合格して、薬剤師になれてこそのものです。薬学部に入学したからといって、6年で卒業して、国家試験に合格できることが、約束されているわけではありません。資格に届かなければ、薬剤師として働くことはできません。

入学前に、大学ごとのストレート合格率を見ておく意味は、ここにあります。ストレート合格率は、入学した人のうち、6年で卒業して、その年度の国家試験に合格した人の割合です(文部科学省の資料の名称は「標準修業年限(6年)での薬剤師国家試験合格率」)。

大学ごとの値は、ストレート合格率の記事(私立56校の順位)で紹介しています。

よくある疑問

Q. 薬剤師は将来、余りますか?

2021年の国の推計では、2045年は、どの仮定の組み合わせでも、供給が需要を上回る見込みです。ただし、仮定をおいた試算で、その差は、仕事に就けない人の数ではありません。

Q. 供給が需要を上回る差は、仕事に就けない人の数ですか?

その差は、仕事に就けない人の数ではありません。供給は、引退した人や休んでいる人も差し引かずに数えていて、需要のほうも、求人の数ではないからです。

Q. 薬学部の定員は、国によって減らされるのですか?

2023年3月の文部科学省の告示は、6年制の薬学科の新設と定員増を、2025年度から原則として認めないものです。今ある大学の定員を、国が減らす制度ではありません。財政制度等審議会の建議は大胆な定員削減を求めていますが、政策の提言で、薬学部の定員削減は国の決定ではありません。2026年7月の骨太の方針にも、薬学部の定員の削減は書かれていません。

Q. 4年制の学科も、定員の抑制の対象ですか?

対象ではありません。告示の対象は、6年制の薬学科(臨床薬学に関する学科)です。

Q. この推計は、いちばん新しいものですか?

2021年の推計です。厚生労働省は、2026年9月30日の懇談会の資料で、この推計を「今年度再算出予定」と書いています。計算し直した推計の公表時期は、資料には書かれていません。

まとめ

  • 国の需給推計は、仮定をおいた幅で示されていて、2045年には、どの組み合わせでも、供給が需要を上回る見込みです。ただし、その差は、仕事に就けない人の数ではありません
  • 全体の人数の話と、病院や地域で足りないという話は、別の物差しです
  • 国は、6年制の薬学科の新設と定員増を、原則として認めていません。財務省が財政制度分科会に示した資料と、同じ主張を盛り込んだ財政制度等審議会の建議は、医学部・歯学部とあわせて、大胆な定員削減を求めています。ただし、建議は提言で、薬学部の定員削減は、国の決定ではありません
  • 推計は、厚生労働省の2026年9月30日の懇談会資料で「今年度再算出予定」とされています

これから薬学部を目指すみなさんへ

当チャンネルは、薬学部を目指すのは、ありだと考えます。ただし、条件があります。

推計は、仮定しだいで変わります。そして、薬剤師として働くには、国家試験に合格して、資格を得る必要があります。

薬学部に入学したから安心、ではありません。入学前に大学ごとのストレート合格率を確かめ、入学してからは、毎日の学習を積み重ねていくこと。その積み重ねが、資格へつながる道だと、当チャンネルは考えています。

データ出典と数字の見方

  • 需給推計:厚生労働省「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 とりまとめ」(2021年6月30日・本体と概要)、同検討会 第8回 資料1「薬剤師の需給推計(案)」です。検討会の資料は、厚生労働省の検討会のページに掲載されています
  • 再算出の予定:厚生労働省「薬剤師のキャリアパスに関する懇談会」第2回 資料2 p3 です(資料のページ)。開催日の2026年9月30日は、厚生労働省の開催案内によります。資料2の表紙には「2021年4月1日」と印字されていますが、懇談会の開催日は2026年9月30日です
  • 財務省の審議会の資料:財務省「人口減少社会の中での総合的な国力の強化(財政各論Ⅰ)」(財政制度等審議会 財政制度分科会・2026年4月23日 資料1)、財政制度等審議会「人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営」(建議・2026年6月26日)と、その参考資料です。建議の頁は、印字された頁で書いています
  • 骨太の方針:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」(2026年7月21日閣議決定)です。薬学部の定員の削減の記述がないことは、全文を検索して確かめています(2026年10月1日時点)
  • 定員の抑制:文部科学省告示第34号(2023年3月29日公布)です
  • 女性の働き方の引用:厚生労働省「令和3年度 薬剤師確保のための調査・検討事業 報告書」p122 です
  • 大小の比べ方:この記事は、推計の値どうしの大小だけを比べています。供給と需要の差の人数は、示していません
  • 確認した日:この記事の数値と原文は、2026年10月1日に原典で確認しています
  • 数値の確かめ方:需給推計と薬局の数の数値は、2人の担当が原典から別々に取り直し、一致したものを使っています。報告書・建議・骨太の方針・告示の文言と頁は、原典で直接確かめています

動画でも解説しています

この記事の内容は、YouTubeの動画でも解説しています。

  • 動画:薬剤師は余る?足りない?|国の推計と財務省の資料
  • URL:https://youtu.be/QPk_9NWGOks

関連する動画と記事は、こちらです。

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公式データで薬学部を分析
薬学部受験情報館を運営しているシカラボです。 教育機関で10年以上、歯学部のデータを扱ってきました。 その方法で、入学者を分母にしたストレート合格率・退学率など、見落とされやすい指標を、厚生労働省・文部科学省・各大学公式サイトの一次資料から分析しています。
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